Warning: Trying to access array offset on value of type bool in /home/hatabo/office-hatabo.site/public_html/wp/wp-content/plugins/wp-word-count/public/class-wpwc-public.php on line 123
親族会議に赤ん坊をつれて文乃がやってきます。そしてこの男の子が芳三の子であることを証明する出生届などを持参し、さらに芳三の残したいいつけを皆の前で披露します。
頑として文乃とその弟となる子を認めようとしない長女、困惑する親族、狼狽する宇市の前に3通目の遺言書が差し出される。
内容は文乃の子が男の子であったばあい矢島家4代目として成人後認知させ跡取りとさせること、そして協議して分割するよう先の遺言書で記されていたそのほかの財産について文乃に相続させることなどがしたためられていました。
「日付が一番新しい遺言書が効力がある。宇市さん、いつになっとるんや?」と長女
文乃の顔も曇ります。
「こないだの遺言状の日付より10日あとになってます」宇市。
呆然とする一同の前にさらに書置きが披露される。
そこには大番頭の宇市による商品の横流し、山林の木を伐採して売却していたことなどが書かれており、行方不明となっていた家宝である雪舟の書も宇市が所有していることが判明する。
このシーンは宇市が狼狽する姿を演出するため中村鴈治郎に大汗をしたたらせなくてはなりません。ですから扇風機のまわる夏に設定されています。7カ月での早産であることや出産までの時間の経過を知らせる意味もあります。
文乃の去った後の部屋には3通目の遺言状が風に舞うシーンがあります。欲にくらみ醜い骨肉の争いをしてきた3姉妹をあざ笑うかのように一陣の風を受けてひらひらと宙を舞います。監督はおそらくこの風に舞う遺言状を3姉妹に見立てるためにあえて3姉妹の前に配置したのでしょう。
高田美和、当時16歳!
散乱する遺言状と書置き。錯乱した長女が破り捨ててしまうのではないかはらはらしました。実際の京マチ子は知りませんがここでは長女として強がってはいるものの男にだまされるこわれやすい若尾文子と対照的な弱い女として登場しています。
心配ご無用。いまだったら原本は法務局に保管してあって、画像はデータ化され、「写し」を請求して発行してもらえるからです!改正民法「法務局における遺言書の保管等に関する法律」
カメラはぐるっと矢島家3代の遺影を映しながら仏壇に手を合わせ去っていく文乃の姿でエンディングを迎えます。
じつは冒頭文乃が芳三の葬儀に参列して、飾られた花輪の数を数えるシーンがありました。それを長女がいぶかしそうに眺めるシーンも。欲のない女を装っていますが身寄りのない若尾文子は一人で生きていくために、そしてわが子の将来を願い今日のこの日の親族会議のために実は着々と準備してきていました。
老舗の女系家族であることのあやうさにつけこんで、宇市の横領と財産の隠匿も知りながらわが子を船場の老舗の跡取りとして継がせるために養子としてつらい立場であった芳三を篭絡し彼女の思いのままの内容の遺言書を芳三に書かせる。
恵まれない境遇から這い上がるために彼女が選んだ道でありました。したたかで先見性のある芯の強い女性、母性をそこに見ることができます。
相続のお勉強の題材として格好な名作映画でした。
2019.6.25