税理士が知っておきたい改正民法(相続編)
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講義の骨子は大きく6つ。すばらしい講義でした。
- 配偶者居住権
- 遺産分割
- 遺言
- 遺留分
- 相続等の効力
- 相続人以外の貢献
4時間半の講義のためポイントのみ書き残し、法制上の経過、推認などの理屈づけ、判例の影響は面白いところではあるけれどここではふれません。相続の効力の「先後」も省略します。配偶者を便宜上「おくさま」、亡くなった人を「おとうさん」などと呼称します。
共通:改正による施行の時期がさみだれ式で異なる上に経過措置が個別に定められていて適用に注意すること
① 短期居住権
だんなさんがなくなりました。おくさんはだんなさんがもっていた建物に住んでいたときに遺産をどうみんなでわけるか決まるまでのあいだ、ただで住める。
子どもたちが反対しても住んでおれば住む権利が最低6カ月保護されます。
(いままで根拠があいまいだったのを法律として明記した)
② 長期居住権
だんなさんが亡くなったときだんなさんがもっていた建物におくさんがいっしょに住んでいたばあい引き続き奥さんが亡くなるまで住み続けることができる権利が認められた。
つまり、いままでだとおくさんが家をもらってしまうと現金まで受け取れず生活費に不安があった。
家が2000万円、預金が3000万円あったとするとおくさんが2000万円の家をもらうともらえる財産は2分の1の2500万円となるため預金は500万円だけ。
いっぽうの子どもは預金の2500万円を相続することになります。
それを改正でおかあさんは「居住権1000万円」と預金1500万円、
子どもは預金1500万円、そして「家の所有権」1000万円、という分けかたにするわけです。
家と預金を設例では半分づつにして、おかあさんは家に住み続けることが可能になります。
その金額は建物の築年数やおかあさんがあとどれくらい生きられるかを加味して算定されます。
ただし、子供の「家の所有権」は「おかあさんが死ぬまで住むという条件のついた負担付きの所有権」です。だから処分できません。この処分ができないことがネックとなることが予想されます。
「遺産分割」のときか「遺言で」その権利を取得する金銭として評価し「相続財産」となった「登記できる権利(乙区)」です。死亡で消滅するという新設された権利です。
遺産をどうみんなでわけるか決まるまで銀行でおろせなかったのを生活費や葬儀費用、借金返済のため一定の金額をおろせるようになった。
それをとりもどそうとするとき、「遺留分をわけてくれ」の請求ができる。たとえばおくさんだと民法で財産の2分の1が保証されており、この「遺留分減殺請求」では法的にその2分の1、つまり4分の1をくださいといえるわけです。
見直し前は財産が土地であったばあい、「持ち分」での権利でした。だからそれが認められたばあい、土地は「共有持ち分」となって、処分もひとりではできずにいました。
それを見直しで「お金」の権利としました。「分け前としていくらちょうだい」といえるようになりました。
いままではこうしたケースのばあい「和解」でお金で済ませていたのですが「物権」を「金銭債権」としたことが画期的ですね。事業承継にも影響するでしょう。
自筆で遺言状を書き残すことはまったく変わっておらず、「本体は手書き、自筆押印」です。
登記所の書類や銀行預金通帳などをパソコンで作成した目録に添付できるようになりました。「目録添付制度」ができたということ。
財産がたくさんある人は手書きするのがたいへんだったのです。
おとうさんが亡くなった。長男の妻はお父さんが入院してから献身的に介護をしてきた。長女や次男は長男の妻まかせきり。長男はすでに亡くなっている。相続ではこんな長男の妻に取り分はありません。法律は遺産に対して何も請求できないという。それでいいのか。
改正で長男の妻は「特別の寄与料」として相続を受けた長女や次男に対してお金をくださいといえるようにしました。ただし、「無償での療養看護」が前提です。
相続のときにお金をわけてくださいではなく長女や次男にたいして請求できるというものです。弁護士事務所の仕事としての依頼がふえることになるかもしれませんということでした。
民法の条文は膨大でこの「特別の寄与」は1050条で定められています。
「息子の嫁の献身」のところではあの映画史に残る名作「東京物語」の原節子さんを思いました。老夫婦の戦死した息子の未亡人役。
原さんなら
「そんなのいいのよ、わたしおとうさんのおせわができてとってもしあわせでしたもの」
といまにもあのまぶしい笑顔でいいだしそうで。
弁護士先生の方々、どうかこんな無償の献身をしてきた人たちに報いるお手伝いをしてあげてください、、、
今回の民法の改正はあたたかみを感じる。
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