遺産分割の効力 (民909)
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「資産税での実務上の問題点~遺産分割協議書の作成、空家の3千万円控除など~」
令和元年7月3日 東京税理士会主催研修 講師:公認会計士 深代勝美氏より
「相続がはじまると、いったん共有関係が生じ、遺産分割があってはじめて個々の個人のものになるという経過をたどります。
つまり、遺産分割によって各相続人個人のものになった個々の財産は、法律上は相続がまじまったときに遡って終始各相続人個人のものであったものとして取り扱われます
しかし、この取り扱いをすることによって他人の権利を害するようなときには、この者との関係ではこの取り扱いをしないことにする。」
平成17年の最高裁の判例を受けて遺産分割協議書の書き方がかわった。
不動産からあがる「賃貸収入」の扱い。
相続の開始から遺産分割確定日までの賃料の帰属。
「賃貸用不動産」と「賃貸収入」は別の財産で、不動産の帰属を決めても賃料の帰属を決めたことにならないし、不動産に遡っても賃料には遡らない。
つまり、遺産分割で賃料の分割を決めたとしても、その債権は相続開始に遡ることなく、それぞれの相続分に応じて金銭などと同じように当然に分割される。
「賃料収入」それ自体遺産ではないけれど、その不動産の所有者が受け取るべきものとしながらも、
実務上は、別個の財産であるとしても、相続人全員が遺産分割の対象に含めることに合意したときは、その対象にできるとしています。(東京地裁)
遺産分割協議書にこの賃料を含めておればそれでもいいですよ、含めてなくて争いとなった時には民事訴訟となる、ということです。
遺産分割が完了するまでのあいだの賃貸収入はあなどるなかれ、
「今回の相続発生から本遺産分割協議書作成までの間に、各遺産について発生した収益及び費用については、各遺産の相続人が取得及び負担するものとする。」と記載すればよいとのことです。
次に後段の
「しかし、この取り扱いをすることによって他人の権利を害するようなときには、この者との関係ではこの取り扱いをしないことにする。」について
相続がはじまって、いったん財産の共有関係が生じることになりますが、その直後、遺産分割協議書を作成する前に相続人である子供の一人が自分の共有持ち分を第三者に売却してしまった。
そのときその不動産を購入した業者について、業者の権利を害するようなときにはこの取り扱いをしない、つまり、遺産分割によりその効力が相続時開始に遡ることはしない、売買は有効に成立するということですね。
その子供は遺産分割が整うまえに、自分の不動産の持ち分をさっさと売って現金化してしまう、他の相続人の知らないうちに登記してしまう。
今週の週刊誌で改正民法の抜け穴として、こうした事例が紹介されているようです。ほかの相続人の子供たちから訴訟を起こされる可能性はあるが、財産が相当額でなければ訴訟費用などを考慮して泣き寝入りになるかも、と。
金融機関で故人の預金をおろしたい、と申し出ても金融機関は口座を凍結し「相続人全員の同意がないと応じられない」としてきました。
顧客から「法律上は二分の一は法定相続人の自分のものだからよこせ」などいわれながらも
ある相続人に払い戻した後、その預貯金がからむ遺産分割協議書が成立したばあい、払い戻しをやり直さなければならないようになって、トラブルに巻き込まれるリスクを負うため応じてこなかった。
これまでは原則として預貯金は相続により当然に分割承継されるので遺産分割の対象にはならない、とされていましたが、今回の判決で「当然に分割されない」、「遺産分割の対象になる」となったのです。
当然に分割されるのであれば、遺産分割協議書に書く必要もなかった、いままでは相続人全員がいいというなら遺産分割協議書に含めてもよいとされていましたが、
今回の判決ではっきり「含める」とし、銀行などはこれを受けて払い戻し請求について全員の同意がなければ請求に応じる必要はないと堂々といえることになったのです。
2019.8.15
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