成年後見人になるために
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税理士会館はJR千駄ヶ谷駅とJR代々木駅、そして地下鉄副都心線新宿三丁目が最寄りの駅で、正面が新宿御苑の緑が美しい公園と恵まれた環境にある。
本日から3日間にわたり、さまざまな視点からのもりだくさんに詰め込んだ講習を受講する。
講座開始まで時間があるためあたりを散歩する。
木をふんだんに使ってぬくもりのある競技場になっている感じ。オリンピックまで10カ月を切った。
さて、成年後見制度について講義をまとめてみる。
現在「認知症」といわれる人は700万人といわれ、そのうち400万人介護保険を使っている。
かつてこのような人たちへの行政の対応は「措置」であって、「行政が施す恩恵」といえるものであった。
しかしながらその措置が立ちいかなくなったために「介護保険」を導入することとなった。
「介護保険」の理念は「措置」ではなく介護を受けることができる「権利」であって、その「権利」の行使に当たっては「契約」が前提となる。
その「契約」を結ぶにあたり、「契約」を結ぶことのできない人たちの存在をどうするかが問題となった。
すなわち「認知症」など判断能力のない、あるいは弱くなった人たちへの対応をどうすべきか。
そこで、「介護保険」を支える役割を担うのが「成年後見制度」であって、「車の両輪」にあたる。
かつての禁治産者制度は金銭的な負担や手続的に差別的なものであったために利用されてこなかった。
それにかわるものが「成年後見制度」であって、基本理念は「共生社会をつくる」こと、「本人の意思(自己決定権)の尊重」、そして「身上保護の重視」(民法858条)にある。
ここからは、専門的な話になります。
成年後見制度の導入にあたり、民法の「任意代理」でいいのではないかという議論があった。
ボケる前に、意思能力があるうちに「代理契約」をしておく、というもので、
その後ボケたときに、意思能力がなくなったときにはその代理契約はそのまま引き継がれるとする考えが学界の立場であった。
ところがそうすると代理人による「権利の濫用」が起こる可能性がある。
そこで反旗を翻したのが講師の新井氏で
「任意代理」は使えない、ボケた後まで継続しない、「終わると考えないといけない」と主張した。
そのために「学会から徹底的に迫害された」という。
そこで世界の潮流となっていてドイツなどで多く利用されている「後見制度」を導入することにより、禁治産者制度にかわる介護保険を支えるシステムを整備することになった。
新井氏はそのトップランナーであり、氏が重視するのはボケた後の利用ではなく、
あらかじめボケる前に、高齢者の大半が認知症の予備軍である状況に鑑み、正常な判断能力があるうちに「任意後見人制度」を活用しその後に備えておくべきで、ボケが比較的軽いうちのための制度である「補助類型」の利用を普及させたい。
すなわち早めに手を打っておくということにある。
「成年後見制度」は判断能力の高低により
① 後見類型(かつての禁治産者)
② 保佐類型(かつての準禁治産者)
③ 補助類型
運用実績は制度全体で21万8千件のうち①が8割を占め、②が15%、一方利用が期待された③が5%にとどまっている。
氏の主張は
「任意後見」と法定後見のなかでも「補助」へとその利用を移行すべきであって、
現在制度の担い手である、弁護士、司法書士、社会福祉士に加え、税理士も積極的にかかわっていくべきであるというものであった。
氏は行動と実績を中心に据えた闘う学者という印象を受けた。感銘を受けた。
本日はほかに、
関連規定としての「民法と成年後見制度」新潟大学法学部教授・上山泰氏による講義、
「認知症等の理解」について東京慈恵医科大学付属病院・渡邊修医師による興味深い講義があった。
あらためてご紹介したい。
2019/10/24
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