配偶者税額軽減1億6千万円の落とし穴 2021/11/9
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だんなさんが亡くなって相続を迎えるとき、「配偶者税額軽減があるから1億6千万円までは相続税がかからない」と余裕をもって過ごす方がいらっしゃいます。
友人、知人が長い闘病生活のすえに立て続けに亡くなってしまい、相続税の相談を受けておりますが、一見お得に見えるこの配偶者の非課税枠を安易に使うことは次の相続をすることになる家族の税負担を不用意に重くすることもあるため注意が必要です。
つまり、次に控える「二次相続」による税負担も考慮したうえでこの特例を利用するかどうかシミュレーションをしてみることが必要です。
銀行員も、銀行から紹介された税理士も「奥さまに全額相続したら相続税はかかりませんよ」といいます。確かにそうなのですが、「ただし二次相続には注意してください」とひとこと添える程度で実際にシミュレーションして二次相続のさいの相続税額を試算したうえでアドバイスをするケースはほとんどないでしょう。
仮にいま、ご主人が8千万の財産を遺し亡くなった。残された奥様の財産は2千万円、ご家族は長男と長女の2人とします。子供たちは何不自由なく生活しており、お母さんにはお父さんが残してくれたこの遺産で豊かな老後を心配なく過ごしてほしいと願い、自分たちはわけてもらわなくていいといっている、こころも豊かな家族であると仮定しましょう。
便宜上、遺産は預貯金のみで、「小規模宅地の特例」などは考慮しないとします。
ケース1 奥さまに全額相続し、相続税をゼロにした
ケース2 奥さまに½、子供たちに¼の法定相続分で相続する
ケース3 子供たちに½ずつで奥さまにはゼロとしたばあい
この3つで試算してみます。
まず、ケース1
なるほど配偶者税額軽減が効いて目の前の相続税はゼロとなります。
しかし、一次相続のあとまもなく奥さまが病気や事故のために亡くなり二次相続を迎えることになったばあい、
8千万に加え奥さまの固有の財産である2千万の預金が遺産に加わります。
加えて二次相続ではもはや配偶者の税額軽減は使えず、さらに基礎控除の一人分600万円が減ります。
その結果、子供たちの相続税は770万円となります。
ご主人が亡くなったあと、奥さまが元気に長生きしたばあい、預貯金は減少し、あるいは子供たちへの特例贈与などを利用することによって遺産額は減少ないし圧縮できます。
次にケース2
法定相続分での分割。
トータルで335万円。
なんとケース1の半額以下になります。
二次相続では基礎控除額はめいっぱい使ったうえで相続税が計算されています。
預貯金の減少や贈与の特例はケース1と同様。
さらに、ケース3
奥さまに0でほんとにいいんかい?と思われるかもしれませんが、ケース2とほぼ同じの税負担となります。奥さまの遺産が4200万までであれば二次相続での税負担はありません。
基礎控除の枠にいまだ余裕があります。
税理士事務所によっては二次相続のシミュレーションは「別料金」であるとしお願いすると別途請求されるようです。
たしかにおくさまの財産を拾い上げたり手間暇も相当かかります。この例では2千万円とした奥さまの預貯金が、へそくりが多額であればあるほど二次相続の税負担は増します。
もちろん奥さんに、すべて残したい、あげたいというご家族もありましょう。どのような遺産分割をするかはご家族で決めることです。
しかしながら税理士としての立場ではシミュレーションの結果を提示する義務があると考えます。
ご家族の、ご一家としての相続税が一次二次あわせトータルでいくらになるのか、この1億6千万に非課税枠だからととびついていいものかどうか、シミュレーションもすることもアドバイスすることもなく、申告書を作成し始める税理士がいたとしたらそれはお客さんにたいする誠実さを欠いていると思います。
2021/11/9
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